医療関係者の皆様
Medical professionals
一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会 理事長
産業医科大学 第1外科(消化器外科・内分泌外科)
平田 敬冶
2025年6月の社員総会において承認いただき、本学会の理事長を拝命いたしました平田敬治でございます。初代理事長の宇都宮譲二先生から始まり、その後樋野興夫先生、冨田尚裕先生、石田秀行先生、と受け継がれた重い襷を背負うこととなり、改めて緊褌一番、学会発展のために尽力させていただく所存です。
本学会は、大腸癌研究会の中で発足した遺伝性大腸癌の研究グループを基盤として,1994年に日本家族性腫瘍研究会として始まり、その後2005年より日本家族性腫瘍学会として、さらに2019年より「一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会」として現在に至っております。昨年、2024年には仙台での学術集会開催期間中に本学会の30周年記念式典が開催され、これまでの歴史を振り返るとともに、新たな未来へ踏み出そうとしています。
改めて、本学会の定款を読み返しますと、その目的に「家族性あるいは遺伝性腫瘍に関して、その実践と教育・研究に貢献することを目的とする」と記されています。この中にあります「実践」とは、「教育・研究」によって得られた成果の当事者への還元に他ならないと考えます。そのためには医療従事者のみならず研究者・行政・民間企業、そして何より当事者も参加する本学会の特徴を活かし、様々な社会的問題も克服できうるような活動が必要と思われます。
がんゲノム医療の急速な発展に伴い、遺伝性腫瘍に関してもその注目度が高まり、本学会の会員数も飛躍的に増加し、2025年5月の集計では2300名を超えました。遺伝性腫瘍の診断は、医療面接(家族歴聴取)や表現型(臨床的特徴)の把握が基本であることに変わりはありませんが、その遺伝学的診断については保険・自費診療が混在し、そのハードルは未だもって高く、また臨床試験や”in house”での遺伝学的診断については、その精度管理・一般診療への応用など、問題が残されています。また、当事者にとっては、その表現型が多臓器・多領域に渡る場合、地域によってはmanagementしていただく遺伝性腫瘍に通じた専門医やカウンセラーへのアクセスが未だもって十分ではありません。
このような課題を克服すべく、学会の基盤強化を図り、その上で医療従事者の教育・育成、ガイドラインの拡充等による情報発信、レジストリ制度の確立、政策提言等々を進め、ひいては当事者への適切な医療の提供につながるべく、本学会の役員・評議員、そして会員の皆様とともに、万里一空の精神で学会の発展に努めてまいりたいと思います。
皆様におかれましては本学会の目的・方針につき、なお一層のご理解とご支援、ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
2025年6月22日